空と太陽の瞳 act.7



 反乱軍とのファイターメカの戦闘後、精神エネルギーの使いすぎで眠ってしまったイーグルとセルシオが起きたのは、12時間後のことだった。
「よーく寝たようだな。二人とも」
「おかげさまで」
「まだ眠い」
 ジェオの嫌味を含んだ言葉に、イーグルはにっこりと笑って答え、セルシオは未だ眠たげに目を窄ませている。
 此処は会議室。今居るのは司令官であるイーグル、副司令官のジェオ、ファイターの纏め役であるセルシオ、そしてランティスの四人だった。仮登録の軍人である自分が、何故この場に居るのか、というのは恐らく聞いても無駄な事なのだろう。
 その辺はすっかり諦めてしまっている。
「俺はイーグルやランティスみたいに馬鹿高い精神エネルギーは持ってないんだ。物凄く標準的な数値しかないんだ。休息時間がイーグルと同じなんて理不尽だっ!」
「そう言うなよ。其の分消耗した精神エネルギーの量だってイーグルの方が多いんだから」
「セルシオ、取り敢えず今回の戦闘に片が付いたら、丸一日休暇をあげますから。それまで何とか頑張ってください」
 思い切り不機嫌なセルシオを、ジェオとイーグルが宥める。どうもいつもと立場が逆だ。その様子を疑問に思っていると、イーグルが気づいたのか苦笑いを浮かべる。
「実際、本当に平均的なファイターと比べても、セルシオの精神エネルギーの能力値は低いぐらいなんです。それをセルシオは技術でカバーしているんですが、今回はそれでも使い過ぎたみたいですね」
「うーっ、一日の休みで足りるかよ、こんなん」
「本当にお願いします。次の作戦にはどうあってもセルシオには来て貰わないと困るんですから」
「それは解かってるけどさ…」
 本当に眠そうだ。いつもの毒舌にもキレがない。
「あー、うん。取り敢えず、今回の作戦が終わったら、俺は即効寝るから。後始末は知らないから。でなきゃ出ない」
「解かりました。これ以上無理は言いませんよ」
「ジェオ、珈琲、目一杯濃いの炒れて。会議はそれから」
「はいはい、解かったよ」
 ジェオはそう言って立ち上がる。最早誰が司令官か解からない。否、元々この隊はそんなことには拘ってはいないのだろう。
 暫くして、ジェオが人数分の珈琲を炒れて戻ってくる。セルシオはそのまま一気に飲み干し、イーグルとジェオはミルクや砂糖をたっぷりと入れている。ランティスは一度口をつけて、余りの濃さにミルクだけ足した。
「よし、取り敢えず目が覚めた」
「そりゃ良かった」
「じゃ、作戦会議を始めましょうか」
 イーグルの言葉に、ようやくいつもの調子を取り戻したセルシオが言う。
「中央塔に入るんだな?そういえば、現時点で確保した捕虜は何人居る?」
「現時点で45人。イーグルとランティスが倒したヤツはやっぱり死んでたよ。雑魚には話を聞くだけ無駄ってモンだしな」
「…すまない」
 ランティスが殺したようなものだ。そうして謝るとジェオが首を振る。
「あの場合は仕方なかった。ランティスはよくやってくれたよ。でなきゃあいつ諸共イーグルも吹っ飛びかねなかったからな」
「それでは、後はあの中央塔に残っているのが何人居るか、ということですね?」
「そう。それから問題は、その背後にいる黒幕だ」
「黒幕?」
 セルシオの穏やかならぬ言葉に、ランティスが顔を顰める。しかし、セルシオはさして気にした様子もなく、その疑問に答えた。
「民間から発起した反乱軍なら、資金はそれ程ないから、ファイターメカを作れたとしても精々十機がいいところだ。ところが、今回はそれの五倍近くのファイターメカが出てきた。つまり、それだけの資金を動かせる人間が背後に居るってことだ」
「死んだあいつも、捨て駒だった…と?」
「多分な。だから中央塔を調べて、その黒幕の痕跡がないか探るんだ」
 セルシオの言葉に納得して、ランティスは頷く。確かに元を断たなければ意味がない。
「まぁ、そう期待は出来ないんですけどね。それでなくても、まだ他にファイターメカが隠されている可能性もあるので、それも見つけ次第処分しなければなりません。中央塔にどれだけ人が残っているかも問題ですが…」
「進入するのも簡単じゃないだろう。向こうだってこちらが出ることは予想してるだろうからな」
「という訳で、だ」
 三人の視線がランティスに集まる。
 何か嫌な予感がして仕方が無いのは、気のせいだろうか。
「今回はほんっとーによく働いてくれたよな」
「ええ。ランティスが居なければ僕はどうなって居たか解かりませんから」
「実力の程はよーく見せてもらった」
 イーグルがにっこりと微笑む。
「中央塔への侵入は僕とセルシオ、そしてランティスの三人のみで行います。いつもセルシオと二人だけだったんですが、今回はランティスが居るから、心強いですね」
「全くだ。実力においてはイーグルを凌ぐほどだからな。頼りにしてるぞ」
「……他の人間は、連れて行かないのか?」
 ランティスの言葉に、全員が揃って首を横に振る。会議の前に三人で打ち合わせでもしたのだろうか、と疑いたくなる。
「うちの人間は往々にして血の気が多くてな」
「どうにも暴走してしまいがちで、こういう任務には向いていないんです」
「その点ランティスなら、イーグルをフォローできるだけの実力もある」
「むしろ殺しても死なないだろうし」
「頑張りましょうね、ランティス」
 本当に何か、嵌められた気がするのは、何故なのだろうか。
 断るつもりは毛頭ないが、理不尽な目に合っているような気がしてならないのは、何故なのだろう…。
 ランティスは、少しばかり軍に入ったことを後悔したのだった。


 NSXが停泊している場所から、三人はバイクで中央塔まで移動する。
 戦艦やファイターメカの移動は目立つので危険だからだ。中央塔の近くまで来ると、見えない場所にバイクを隠し、出来るだけ塔から見えないようにして近づいていく。
「人の気配は殆どないな」
「実際中に入ってみないことには解かりませんが」
「素直に入れてくれればいいがな」
 イーグルとセルシオが抑えた声で言葉を交わす。
「考えていても仕方ないでしょう?」
「それもそうか。じゃ、行くぞ」
 短くセルシオがそう告げると、そのまま一気に中央塔の入り口まで走り寄る。その前で一旦止まり、中の様子を伺う。
「…ドアには、やっぱりロックが掛かってるな」
「まだ中に人が居る、ということでしょうか」
「逃げるための時間稼ぎってのも考えられるが…」
「逃げる時間なら僕たちが寝ている間に充分ありましたよ」
 イーグルの言葉に、肩を竦めて苦笑いを浮かべると、セルシオは腰に帯びている袋から小さな機械を取り出した。
「…セキュリティシステムに直接繋がっていると嬉しいんだけどな」
 そう言いながら、ドアの開閉を操作する機械に、先程出した機械を繋げる。ランティスには何をしているのか、見ているだけではさっぱり解からないが、恐らくはドアを開けるためなのだろう。半透明の画面が機械から浮き出し、それを見ながら、目に見えないほどのスピードで操作している。
 ピッ
 小さく機械音が鳴ったと思うと、ドアが開いた。
「流石ですね」
「ドアを開けただけだ。セキュリティシステムはまだ起動してる。油断は出来ないぞ」
「ええ」
 セルシオの言葉にイーグルは短く頷き、中に入っていく。ランティスは二人の後を着いて行きながら周りの様子を伺う。人の気配がないか探るが、ランティスが感知出来る範囲には居ないらしい。
 階段の近くまで来ると、セルシオが短く問う。
「上か、下か。どっちに行く?」
「下ですね。ファイターメカがあるとしたらそちらでしょう。先に処分してしまった方がいい」
「解かった」
 セルシオが先に立ち、階段を下ってく。エレベーターもあるが、常識的に考えても敵地に乗り込んでそんなものを使うのは危険以外の何ものでもないのだろう。
 セルシオの後にイーグル、その後ろをランティスが着いて行く。常に気配に気を配りながら、薄暗がりの中を歩く。
「…暗いな」
 セルシオは短く呟くと、腰に帯びた袋から、今度は小型のライトを取り出した。小さな明かりが周囲を照らし、慎重に階段を下りていく。
 階段が途切れると、すぐ目の前にドアがあった。其処にもロックが掛かっているらしく、矢張りセルシオが機械を繋いで手早く開けた。
 中は暗くてよく見えない。セルシオが更に機械を操作すると、中に明かりが灯った。
「ビンゴ、だな」
「そのようです」
 その部屋は大方の予想通り、ファイターメカの格納庫として機能しているらしく、随分と広々した空間が広がっていた。
「……あと20台はあるな。本気で一体どれだけの金持ちが裏にいやがるんだ?」
「つべこべ言っても仕方ありませんよ。さっさと作業を済ませてしまいましょう」
「了解」
「ランティスも、手伝ってくださいね」
「ああ」
 短く頷き、ランティスも前もってされていた指示の通りに、ファイターメカに近づいていく。直接機械に触れる必要はない。ようするに、使えなくしてしまえばいいのだから、どんな方法でも構わないのだ。
 ランティスはイーグルに前もって渡されていた時限式の小型爆弾を、ある程度の感覚でばら撒いて、また入り口に戻る。
「ま、こんなもんかな」
「向こうはこちらの侵入に気づいているでしょうか?」
「…少なくとも、こっちに来ているのには気づいてないんじゃないか?でなきゃ一人ぐらい様子を見に来たっておかしくない」
「そうですね。此処で話していても仕方ありませんし、上に戻りましょう。あれが爆発する前にケリをつけないといけませんから」
 イーグルの言葉に促され、また上の階へ戻る。
 矢張り人の気配は感じられない。
「……本当に逃げたのか?…まさかな」
「ファイターメカを置いたまま逃げたりはしないでしょう」
 一台や二台ではない。あれだけの数のファイターメカを失えばかなりの損失になる筈だ。まさか、置いて逃げるとは思えない。
 一階に戻り、更に上の階へと歩を進めていく。セルシオが矢張り先の様子を伺いながら、階段を上っていく。すると、不意に上の方からごく小さな物音がした。
「下がれ」
 短くそう言ってランティスは二人の前に出る。
 聞き間違いではない筈だ。確かに物音がした。侵入者に気づいて誰か様子を見に来たのだろうか。しかし、矢張り人の気配はしない。
「……ランティス」
「二人とも其処で待っていろ」
 イーグルが短く自分の名前を呼ぶのに振り返り、ランティスは言った。自分が此処に連れてこられたのは、要するに二人の盾になるためだ。少なくとも、二人よりは自分は頑丈だし、ちょっとやそっとでやられたりはしない。
 ゆっくりと階段を上り気配を探る。しかし、矢張り人の気配は感じられなかった。もうすぐ次の階まで出ようとしたところで、さっと何かが横から飛び出した。慌てて一歩下がると、目の前に飛び出したのが何なのか確かめる。
「……ロボット?」
「小型の戦闘用ロボみたいだな。道理で気配がしない筈だ」
「しかし、的確に狙って攻撃してくるということは、誰かが近くで様子を伺っているということです」
「兎に角、ロボットなら動かせないように壊してしまうに限る」
 セルシオの言葉に、ランティスは携帯させられているレーザーソードを取り出した。ファイターならば…否、軍に入っている者ならばメカニックでさえ、これを持っている。
 ランティスはレーザーソードで素早く小型ロボに切りかかる。腕を切り落とし、完全に動けなくすると、また奥から物音がした。
「…本当に、どんな風に資金の調達をしているのか、ぜひ責任者に聞いてみたいですね」
「先客万来ってとこか」
「…軽く20台か」
 流石にランティス一人に任せることはせず、イーグルとセルシオもそれぞれレーザーソードを取り出す。そういえば、この二人が生身で戦うところを見るのも始めてだな、と改めて思う。実際、見た目からはあまり戦っている姿というのはイメージ出来ない。
 そんなことをを気にしている暇もなく、小型ロボは次々と三人に襲い掛かってくる。
「セルシオ、この小型ロボの性能は解かりますか?」
「量産タイプだな。武器はレーザーソードと、レーザービームってとこか」
「手早く攻撃手段を奪った方が無難ですね」
「いやいや、まとめてぶち壊した方が簡単だって。二人とも、下がってろよ」
 イーグルの言葉にセルシオは首を振り、にやりと笑う。何となく嫌な予感がして、二人はさっと身を引いた。
「セルシオ…まさか……」
「そのまさか。そらよっ」
 そう言って投げたのは先程の小型時限爆弾。小型ロボが固まっているところに勢いよく投げる。設定時間も当然短くしてあるのだろう、すぐに爆発音がして、ランティスはイーグルを庇うように身を伏せた。
 セルシオも体を伏せて、様子を伺う。
「うーん、上出来だな。半分以上減ったぞ。さっさと片付けようぜ」
「……無茶な」
「…お前に言われるんだから、相当だな」
「どういう意味ですか」
 後ろで交わされるランティスとイーグルの会話を全く気にした様子もなく、セルシオは残った小型ロボに切りかかっていく。ランティスはイーグルと顔を見合わせ、溜息を吐いてから自分達も残ったロボに切りかかる。
 それもあっという間に始末すると、残ったのは機械の塊ばかりである。
「さて、それじゃ先に進むか。小型ロボもこれで打ち止めだと助かるんだが」
 先程自分がした無茶もなんのその、にっこりと笑って見せるセルシオに、ランティスはイーグルに小声で問いかけた。
「…ひょっとして、機嫌が悪いのか?」
「いえ、いつもこんな感じです」
「そうなのか…」
 これが『いつも』というのは、かなり嫌だ。敵にはしたくない。
「どうしたんだ?行かないのか?」
「いや…」
「今行きます」
 セルシオに促され、三人は更に奥へと進んでいく。
 二階を一通り調べ、更に上へ。
 矢張り人の気配は感じられない。しかし、あの小型ロボを見れば、誰も居ないというのはおかしい。絶対に誰か居る筈なのだ。
「…ヤバいな」
「ええ」
 セルシオとイーグルの言葉に、焦りが滲む。ランティスも、すぐに何が拙いのかが解かった。地下の格納庫にばら撒いた時限爆弾にセットした時間が迫っているのだ。
 全20階の塔だ。全てを探すには時間が足りない。
「もう少し、時間に余裕を持たせるべきだったかな」
「……上から探しましょうか」
「根拠は?」
「馬鹿と何とかは高いところが好きらしいですから」
「なるほど」
 それで納得するのもどうかと思うのだが、セルシオはあっさりイーグルの言葉に頷く。
「じゃ、最上階まで一気に行くか」
「はい」
 セルシオの言葉に、イーグルはにっこり笑って頷く。
 どっちもどっちの、なかなかいいコンビに見える。はっきり言って、自分の存在は逆に邪魔ではないのだろうか、と思わずには居られない。
「行きますよ、ランティス」
「…解かった」
 そんな自分の心境を知ってか知らずか、イーグルはランティスを促す。
 三人は一気に最上階まで駆け上がる。
 最上階まで来たところで、目の前に数人の男達が立ちはだかった。
「ビンゴ、だな」
 当然向こうはすぐさまこちらに攻撃してくる。三人もレーザーソードを出して応戦した。向こうは10人ほど。勝てない人数ではない。
 それぞれ向かってくる相手と戦いながら、一人、また一人と撃退していく。
 何人かを気絶さたところで、不意に銃声が響いた。
「っ!」
「セルシオ!」
 弾丸はセルシオの腕に命中したらしく、レーザーソードを取り落とす。ただし、肘から先の部分は金属の防具に覆われているために、怪我はないようだった。しかし、其処にすかさずセルシオの目の前に居た男が切りかかる。
 ランティスもイーグルも、互いに別の相手と戦闘中で、助けに行く余裕はなかった。
 もう駄目か、とランティスが思った時、セルシオは右手を握り込み、腕をそのレーザーソードを受け止めるように動かした。セルシオの右手の防具から、短剣のような物が出て受け止めた。
 驚きに目を見開く男にセルシオはすかさず腹に蹴りを入れ、蹲ったところを肩に手刀を落とし、気絶させる。
 取り敢えず無事なのを確認して、ランティスも目の前に居る男を気絶させた。イーグルも同様で、ひと段落着くが、一体誰がセルシオを撃ったのか。まだ少なくとも一人、近くに潜んでいるのだ。
「…セルシオ、怪我は?」
「平気だ。レーザーソードも無事だな」
 先程取り落としたレーザーソードを手に取り、状態を確認する。そして、腰のベルトの奥から小型の小さな銃を取り出し、廊下の一角に向けて撃った。
「うわっ!」
 慌てる男の声がし、廊下の中央へと出てきた。どうやら突き出した柱の影に隠れていたらしい。
「こいつで最後みたいだな…」
「くそっ」
 見つかって慌てた男がイーグルに向けて銃を構えるが、其の前にセルシオが男の懐に飛び込み、蹴りつける。ぎりぎりのところで男は避けたように思えたが、気がつけば腕が鋭利な刃物で切られていた。靴にも、先程と同様の短剣が仕込んであったらしい。
「…イーグル」
「話は後にしましょうね、ランティス」
「…」
 言いたいことはいろいろあるが、確かに今そんなことをしている余裕はない。男は利き腕を切られ、既に銃も先程取り落としていた。セルシオは銃を手に取り、男に向ける。
「さてと、アンタに聞きたいことがあるんだよ、俺。いいかな?」
 笑っては居るが、静かな威圧感がある。
「此処に残っているのは、アンタで最後?」
 セルシオの言葉に、男は必死に頷く。その様子を見て、ぐっと銃を顎の下に突きつける。
「本当に?」
「ほ、本当だっ、嘘じゃない!!」
「ふん…小物が最後か」
 小さく舌打ちしたかと思うと、セルシオは振り向く。
「イーグル、ランティスと先に下りててくれ。爆発まで時間がない」
「解かりました」
「…いいのか?」
「大丈夫ですよ、セルシオは」
 イーグルの言葉に、ランティスは頷く。確かに、セルシオに対しては心配するだけ馬鹿を見るような気がしてしまう。
 そして、二人は取り敢えず塔を下りて、外に出たのだった。


 それから十分も立たないうちに、爆発音がした。
 時限爆弾が作動したのだ。セルシオはまだ出てこない。
 地下からの爆発が、一階にまで及び、塔を揺らす。根元が崩れれば、上も崩れる。この塔が崩壊するまで時間がない。
「…本当に大丈夫なのか?」
「平気ですって。ほら」
 イーグルが上を指差す。ランティスがその先を視線で追うと、パラシュートのようなものを片手に、セルシオがゆっくりと降りて来ていた。
「……本当に、あいつはいくつ物を隠してるんだ?」
 今回見ただけで、小型の機械に、ペンライト、小型時限爆弾、レーザーソード、右手と右足にそれぞれ短剣が仕込まれていて、小型銃も持っていたし、最後はパラシュート。
「さぁ、僕も全部は知りませんよ」
「…まだ、あるのか」
「彼の異名は『全身武器庫』ですから。まぁ、僕もいくつか作って貰ってるんで、人のことは言えないんですけどね」
「自分で作ってるのか?」
「器用なんですよ、セルシオって。ファイターを続けられなくなっても、メカニックになれそうです」
 そういう問題なのだろうか。
 いや、きっと気にしていてはいけないのだろう。そういう細かいことは。そうしてイーグルとランティスが会話しているうちに、セルシオは地上に降り立った。
「お待たせ」
「お疲れ様です。それで、どうでしたか?」
「駄目だな。裏に居る人間に関しては最後まで口を割らなかった。最後には自分で自分の喉を裂いて死んだよ」
 セルシオは溜息を吐く。
「一つ確かなのは、黒幕の名前を言うのは死ぬより怖いらしい、って事だな。他の事にはあっさり答えてたから」
「ファイターメカの生産に関しては?」
「あいつの知る限りでは此処にあるもので全てらしい。ま、所詮小物だから、知らされていないだけだろうが」
「そうですか。仕方ありませんね、NSXに戻りましょう」
「了解」
 セルシオは報告が終わった途端に肩の力を抜いたらしく、ぐっと伸びをする。イーグルはそれを見て苦笑しながら、ランティスは何とも言えない気分になりながら、それぞれNSXに帰艦したのだった。



 NSXに戻った後、セルシオは宣言通りにそのまま部屋に戻り爆睡した。イーグルはその後もいろいろと指示を出していたが、ランティスはやる事もなくなり、部屋に戻った。
 そして後日、矢張り宣言した通りに、セルシオが先のファイターメカでの戦いに出ていた三人を殴っている姿が目撃された。



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