熱の温度 3



 半ば予想していた来訪があったのは、週の半分も過ぎた頃だった。
「あんた、暁彦さんに何しやがった!」
 音楽準備室で寛いでいたところを、騒々しい声が遠慮もなく邪魔をする。これは数日前にも聞いた台詞だ。若干口汚くなっているが。
「何だ、今度はどうした」
「どうしたって……あ、あんな……っ」
 言いかけて口をぱくぱくさせる。顔が赤い。
 ついついからかってやろうかと思ったところで、衛藤の後ろから声がした。
「フェロモン大放出って感じですね」
「衛藤にしろお前にしろ、せめてもう少し人目をはばかって入って来いよ」
「んな事はどうでも良いよ。暁彦さんに何したかって聞いてるんだよっ」
「何ってまあ……ほんのちょっと煽っただけだぞ?」
「ほんのちょっと…?ちょっとであんなになるか!」
「あんなって?」
 毛を逆立てた猫のように威嚇してくる衛藤から視線を外して加地に聞く。どうせ衛藤に聞いてもまともに説明は出来ないだろうしな。
「さっきも言った通り、フェロモン大放出ですよ。溜息一つで色気が溢れ出てて非常に危険ですよ。良いんですか、放っておいたらそのうちあのフェロモンに当てられた生徒に襲われるかも知れませんよ」
「良いも何も、それは衛藤が追っ払ってくれるだろ」
「は?俺?」
「おう、ガードは任せた」
 軽く手を上げて笑うと、衛藤が顔を真っ赤にして反論してくる。
「俺が襲うとは思わないのかよ…っ」
「お前さんには出来ないだろ」
 本気で惚れてるからこそ、絶対に無理だろう。
「あ、んたなっ、ぶん殴ってやる…!」
「ちょ、衛藤くん、落ち着いてっ」
 殴りかかってこようとした衛藤を、加地が羽交い絞めにして抑える。
「話してよ葵さん、もう我慢できないっ!」
「気持ちはよく解かるけど、殴るのはまずいって」
「別に殴られてやるぐらいは構わんが、良いのか?こうしてる間にも吉羅が襲われてるかも知れんぞー」
「……っ、畜生ーーー!!」
 そう叫んで走っていくのを見送ると、加地が呆れた顔をする。
「あれじゃあ、本当に衛藤くんが可哀想ですよ」
「だったらお前さんが慰めてやってくれ」
「別に僕は良いですけどね…」
「それに、そんなに心配しなくても……っと」
 白衣のポケットに入れておいたケータイが鳴って液晶を見れば、メールの受信。
「そんなに長くはかからねえよ」
 ひっそりと笑って、またポケットに仕舞う。
 普段メールなんて全然使わないやつからの、短い文章。
『今週の土曜日、時間は空いていますか』


 土曜の午後七時。
 呼び出されて吉羅のマンションに着く。
 部屋のインターフォンを押せばすぐにドアが開けられ、中に入ってドアを締めた途端にキスをされた。
 流石に驚くが、此処で引き離せばもう二度と吉羅は自分から手を伸ばしてくる事は無いだろう。
 ぎゅっと俺の服を掴む手が震えているのを見て、それを確信する。
 その震える手をそっと握り締めて、吉羅のキスに応える。
 一頻りキスを堪能すると、強い力で抱きつかれた。
 額を肩に押し付けてきて、表情が見えないし、少し苦しい。
「吉羅」
「……私だって、あなたに触れたい」
 ぽつりと呟かれた言葉を聞いて、そっと背中を撫でる。先を促すように。
「本当は一日中だって抱いて欲しくて、あなたに触れていたくて、触れていて欲しくて、どうしようもないんです」
「だったら、そうすれば良い」
 顔を上げさせようと肩を掴むと、尚更強くしがみつかれた。今どんな顔してるか見たいんだけどなあ。
「出来ませんよ、そんなこと」
「まあ、ずっとは無理だろうけどなあ。明日はお前も休みなんだろ、そのつもりで呼んだんじゃないのか?」
「それは…」
 図星らしく、口篭る。
 そんな様子に笑って、吉羅の髪を撫でる。
「顔上げろよ、お前の顔、今日はまだちゃんと見てない」
「……」
 やっと上げてくれた吉羅の顔は、目尻は赤く、瞳は潤んでいて、表情は不安そうで。
 誘ってるよな、これは、完全に。
「今からずっと、明日も、休みが終わるまで嫌って程抱いてやるよ。お前も触りたいなら触れば良い。俺は逃げたりしない」
「金澤さん…」
「何なら、確かめてみるか?お前の好きなようにすれば良い」
 その言葉に、吉羅は恐る恐るといった風に頬に手を添えてきて。吉羅を見詰め返してそれをじっと受け入れていれば、矢張り恐る恐る顔を寄せて、キスをしてきた。
 震える唇が重なって、それがどうしようもなく、愛しい。

 ベッドの上に腰掛けて、俺の足の間に吉羅が膝を付く。そして股間に顔を埋めて、俺のモノを懸命に舐めしゃぶる。
「ん、ん……うっ、ふ…」
 決して上手くはない、拙い舌の動きで。
 それは当然だろう。こんな事をするのは初めての筈だ。
 それでも拙いからこその懸命さに煽られる。
 視覚的にも、相当クるものがあるし、と視線を吉羅の身体へと移す。
 今吉羅が身につけているものと言えばワイシャツだけで、左手を俺のモノの根元に添えて、もう片方の手は自ら慣らす為に後ろへ伸ばされている。
 正直、その姿だけで達けそうなぐらいに煽られる。今まで全部俺からやっていたから、余計にそう感じるのかも知れないが。
「ふ…んんぅ、ん、んっ」
「うっ」
 根元から舐め上げて、溢れた先走りに吸い付いてくる。先端を吸われれば、思わず声が出そうになる。
 そうして奉仕する吉羅の表情はとろりと溶けて、何と言うか凄く。
「なあ、美味いか?」
 美味しそうにしゃぶっているように見えて、つい問いかけてみたくなる。一旦顔を上げた吉羅はことりと首を傾げて。
「…解かりません」
「解からないって何だよ」
 美味いか美味くないか、それだけだというのに、首を傾げられても困る。というか、決して美味いものでは無いと思う。俺だって吉羅にすることはあるが、別に美味いと思ったことはない。
「解かりませんが……金澤さんのだから、何となく、美味しいような気がしてきて」
「…もう良い」
 どうやら本気で解からなくなっているらしい。そのうち美味しいとか本気で言いそうだなと考えて、それが嬉しいと思う自分も相当だなと笑う。
 吉羅が再び口淫を開始してきて、それを見ているとどうにも自分も触りたくなってくる。
 今は吉羅の好きなようにさせようと思っているから我慢しているし、これはこれで楽しいし気持ち良いのだが、どうにもやられっぱなしというのは性に合わない。
 だからつい、邪魔をするように口を出してしまう。
 さっきから気になっていたから、というのもあるのだが。
「なあ、吉羅」
 呼びかければ、今度は視線だけを上げてこちらを見てくる。
「俺と会ってない間に、自分で後ろ触ったのか?」
「っ!」
 息を呑むのが解かって、次の瞬間ぱっと頬が朱に染まる。それだけで答えとしては充分だった。
 自分で慣らすのに、最初から余り抵抗も無さそうだったのが気になって、まさかと思ったが、矢張りそうだったらしい。
「…我慢出来なかった?」
 更に問いかければ、恨めしそうなそれでいて潤んで何処か強請るような瞳で睨まれた。
 そんな顔も可愛く思えて、そっと頭を掴んで引き離す。
「金澤、さん…?」
「もう良い。このままされてたら達っちまいそうだしな。久しぶりなんだから、最初ぐらい一緒に達きたいだろ」
 ベッドの上でずるりと身体を後方にずらして、吉羅を手招きする。
「ほら、来いよ」
「……」
「欲しく無いのか?」
「…欲しい、です」
 そう囁くように言って、俺の上に跨る。大きく何度も深呼吸をして、勃ち上がっている俺のモノに手を添えて、ゆっくりと腰を下ろす。
「っ…う……ん、く…っ」
 先端から少しずつ。
 焦れったくなるぐらいのスピードで、本当に少しずつ、呑み込まれていく。
 途中で何度も腰を掴んでそのまま突き入れてしまいたくなる衝動に襲われるのを、何とか堪えてその卑猥な光景をじっと見詰める。
「ふ、ん……っ……は…ぁ…」
 身体を支える手も足も震えていて、顔は真っ赤に染まっている。少し進む度に止まってぎゅっと目を閉じて、深く呼吸を繰り返す。
 どうにもやっぱりただ見ているだけなのは焦れったい。
 ついつい、痙攣する太股をするりとなでると、一気に力が抜けたのか、そのままかくんと腰を落として一気に根元まで咥え込まれた。
「ひ…あ、ぁああっ」
「…く」
 こちらもきゅうっと強く締め付けられて、俺も思わず呻いてしまう。
「うぅ……ふ…っ」
 最後まで呑み込んだのは良いものの、ふるふると身体を震わせて、目尻には涙が滲んでいる。ちょっと悪い事をしたな、と感じて目尻に浮かんだ涙を拭う。
「大丈夫か…?」
「っ、だい、じょうぶ、です…っ」
 とても大丈夫そうには見えないがそう頷いて、また大きく呼吸を繰り返す。
 その間もひくひくと内壁は絶えず締め付けてきて、一ヶ月ぶりの吉羅の中は酷く気持ちが良い。
 吉羅は息を整えて、今度はゆっくりと腰を浮かせる。
 手で身体を支えて、足に力を込めて、少しずつ。
「う…っ、ふ、ん…は……っ」
 途切れ途切れに吐息を零して、少し腰を浮かせては腰を下ろす。そうして動くだけで相当力を入れてしまうせいで、こっちもぎゅうぎゅうと締め付けられる。
 辛そうな顔をして、顎の先端からぽとりと汗が落ちる。
 けれど辛いだけでないのは吉羅のモノが萎えることなくそそり勃ち、汁を零していることからも一目瞭然だった。
「は……かなざわ、さん…っきもち、いい…ですか…っ?」
「ああ…さっきからお前がぎゅうぎゅう締め付けてくるからな。それに、眺めも良い…」
 吉羅が上に乗って動いているから、こっちは落ち着いて全部よく見える。
 とろりと潤んだ赤い瞳も、それに負けず劣らず赤く快楽に染まって震える身体も、出し入れされるその部分も余すところなく全て。
 眼でも、そして直接的にも、充分すぎるほど感じる。
「お前だって解かるだろ、中が、俺の先走りで濡れてんの」
「ふ、は……あ…」
 吉羅はこくこくと頷いて、またゆっくりと腰を持ち上げて、落とす。その度に濡れた音が響く。
 正直さっきからこっちも溢れっぱなしで、今すぐにでも達ってしまいそうなのを耐えるのに必死なのだから情けない。
 いくら主導権を渡しているとはいえ、このままでは先に達してしまいかねない。
 少しくらいはこちらから手を出しても構わないだろう。
 手を伸ばして、吉羅のモノを握り込む。
「あ…っ、だめ、です…っ」
「何で?」
「もたない…から……あ…」
「安心しろ、俺もそんなにもたねえから」
 扱いてやれば、尚更こちらも強く締め付けられる。搾り取られそうだ。
「ほら、お前も、動けよ」
「あ……ふ、ぁ……くっ」
 促せば、ぎゅっと目を瞑って、またゆっくりと腰を浮かせる。それでもこちらが触っているせいで先程までよりも更にゆっくりだ。
 腰が浮き上がったところで、先端に爪を立てると、びくんと身体を震わせて、身体から力が抜ける。
「ふ、あ、ぁあああっ!」
「うっ」
 自然と勢いで奥深くまで飲み込んで、びゅくっと吉羅のモノから白い飛沫が飛び散ったのとほぼ同時に、俺も強く締め付けられて中へと欲望を吐き出す。
「は、あ…ああ…」
 ぐったりと倒れ込んでくる吉羅を受け止めて、そのままくるりと体勢を入れ替える。
「………金澤、さん?」
「まだ、足りないだろ?何しろ一か月分だからな」
 にやりと笑って、触れるだけのキスをすると、ふわりと吉羅も笑い返してくる。
「はい」
 頷いて、俺の背中に手を回してくる吉羅に、今度はしっかりと口付けて、再び行為に没頭する。今度は俺が主導権を握って。
 嫌だと言われるまで、言われても、今夜は止めるつもりは無い。
 それを望んだのは、吉羅自身なんだから。



 何度も、何度も。
 奥まで突かれて、揺さぶられて、体勢を変えてはまた貫かれて。
 どれほどの間そうされているのかも解からなくて、ベッドシーツを握り締めて、最早されるがままで。
「あっ、あ、あ…ぅあ…、や…っ」
「嫌?」
「……っ」
 嫌だと言いそうになれば、改めて問われて、唇を噛み締める。そこで頷ける筈もなく、また突かれて、何度も、何度も。
 自分でも何度目なのか解からなくなるほど達って、中に金澤さんの精を受け入れて、外も中もぐちゃぐちゃで。
 自分の身体の感覚さえ解からなくなって、それでも何故か与えられる快楽だけは感じ取る。そんな状態でも尚、行為は続いて。
 そんな状態で達して、流石に弱音を吐く。
「あ…ふ、ぁ……あ、も、むり……で…」
「無理、じゃ無いだろ、ほら」
 またぐっと腰を押し付けられれば、条件反射のように身体が跳ねた。
「は…っ、あ、ぁあっ」
 身体にも全然力が入らないのに、それでも行為は続いて、一体それがいつ終わったのかさえ解からないまま。


 気がつけば寝室の天井を見上げていた。
 無性に瞼が重くて、全身がだるくて仕方が無い。
 カーテンの隙間から光が差し込んでいるところを見ると、夜はとうに明けているのだろうが、今何時かと時計を確認する気にもなれない。
 恐らく気を失っていたのだろうが、途中から殆ど記憶が無いからそれがいつなのかも判断できない。
「お、気がついたか?」
「……」
 声をかけられ、そちらを見れば、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを持った金澤さんが、寝室のドアを開けて入ってきた。
 シャワーでも浴びてきたのか、随分すっきりしているように見える。
「大丈夫か?」
「―――っ」
 名前を呼ぼうとしたが、掠れて声にならない。ひりひりと喉が痛む。
「ああ、昨夜散々啼かせたからなあ」
 そう言って私の身体を抱き起こして、水を含み、口移しで飲ませてくれる。
「ん…」
 ぬるめの水が喉を潤してくれる。それがやけに美味しく感じるのは、喉が渇いているせいか、それとも、金澤さんが飲ませてくれているから、だろうか。
「もっと欲しいか?」
「…はい」
 ようやく、掠れてはいるものの、声が出せた。それでもまだ喉が痛む。声を出せば尚更。
 再び金澤さんの唇が重なって、水が流し込まれる。
 そうして何度か水を飲ませてもらって、再びベッドに戻る。
「…有難う御座います」
「いやいや、まあこうなったのも俺のせいだしな」
「私が、望んだ事です」
 嫌と言うほど、抱いて欲しい。一日中でも、ずっと。
 そう望んだのは私自身なのだから。
「さっきシーツだけは換えたけど、身体も拭かないとな。気持ち悪いだろう」
「……なんだか、嬉しそうですね」
「そりゃなあ、こういう時でもなきゃ、お前の世話を焼くなんて出来ないからな。ちょっと待ってろ」
 やけに生き生きとした表情で嬉々として寝室から出て行く。
 こちらは身体を動かす気にもなれないのに、随分元気なことだと思う。
 暫くして、お湯を入れた桶とタオルを持って金澤さんが戻ってくる。
「ほら、起きれるか?」
「…身体くらいは、自分で拭きます」
「いいから、任せろよ」
 そう言ってまた抱き起こされる。
 濡れたタオルが身体にこびり付いた汚れをどんどん拭き取っていく。少し熱いくらいのタオルが気持ちよくはあるのだが。
「介護でもされている気分です」
「俺は楽しいけどなっと。さて、あとは中だけだな」
 そうして呟かれた言葉に、思わず後退る。
「っ…いえ、それは本当に自分でします」
「遠慮すんなって」
「遠慮じゃありませんっ」
「じゃあ、何だよ」
「恥ずかしい、からです」
「それなら大丈夫だ、お前の恥ずかしがる顔は可愛いから。それにお前がやるより、俺がやった方が早いだろ」
 全然大丈夫じゃない、と反論しようとするが、結局問答無用で足を開かされる。
 抵抗しようにも力が入らない体では無駄な努力にしかならない。
 腰の下にタオルを置かれて、指を二本突き入れられ、中に入っているものが掻き出されていく。
「ふ…っ、く…」
 掻き出すだけ、それ以上の意味合いは全く感じられない指の動きに、それでも金澤さんが触れているのだと思えば、どうしても反応してしまう。
「な、んで……そんな、楽しそう、なんですか…っ」
「そりゃ、お前が可愛いからだ」
「……っ」
 意地が悪い。
 可愛い、なんて言われて、本当なら嬉しくない筈なのに。他の誰に言われたって、嬉しくはないのに、この人にそう言われるのは、まるで愛しいと言われているようで、嬉しいと思ってしまう。そんな、私の心情も何もかも解かっていてそう言うのだから。
「…ほら、終わった。って、訳でもないかな」
「……」
 中に入っているものを全て掻き出されて、その間にどうしようもなく反応してしまったものは、隠すことも出来ずに金澤さんの眼前にさらされている。
 昨夜あんなにしたのに、とそう思うけれど、自分の身体の反応を否定する事は出来ない。
「もう、良いです。放っておけばそのうち収まりますから」
「それじゃ、すっきりせんだろ。最後まで責任とってやるよ」
「ちょ、ま…、待って…っ」
 止めようとしても、矢張り聞き入れてはくれず、前を握り込まれる。上下に扱かれて、否応なく体は昂ぶって、腰が揺れた。
「あ……っ、ふ、ぁあっ」
 反射的に金澤さんに手を伸ばして縋りつく。何度も扱かれて、その度に身体は震える。
 先端から蜜が溢れ出して、金澤さんの手を濡らす。
「あ、ああ…、や…」
「……そろそろ、達っても良いくらいだけどな」
「んぁ、あ…っ」
「まだ、達けない?」
「と、……いけ、な…」
「ん?」
「後ろじゃ…ないと、達け、な…っ」
 どんなに扱かれても、達きそうになっても。前だけでは達けない。もっと奥まで触れて欲しい。身体が疼いてどうしようもない。
「金澤、さん…っ」
「……指で良いのか?」
 問いかけられて、首を横に振る。
 指でも達けるだろう。それでも、目の前に金澤さんが居るのに、指でなんて、嫌だ。
「あなたが、良い…」
「…少しは、休ませようと思ったんだけどな」
「一日中でも、抱いてくれるんでしょう?」
「ああ、そう言ったな」
 苦笑いを浮かべて、足を抱えられて、金澤さんの熱を押し当てられる。それだけで期待して、ひくりと喉が鳴る。
 押し入られる感覚も、そして中を満たされる感覚も。
 金澤さんの熱を感じて、私も熱が上がって。
 二人の体温が同じになるまで。
 何処までも繋がりあって、溶けてしまいたい。
 金澤さんの熱の温度を感じて、私の温度を金澤さんに伝えて。
 これ以上幸せなことはないのだと、教えて欲しい。
 今日が終わる、その時まで。


Fin



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小説 B-side   金色のコルダ