二人のお茶会 2



 今日も劉鳳とかなみは二人でお茶会をしています。
 さて、そんな時一人の訪問者が訪れました。
 めずらしいお客様に二人は大歓迎で迎え入れました。そして、一緒にお茶会の仲間入り。


「あの、いい…の?あたしも混ざっちゃって…」
 遠慮しがちにシェリスは尋ねた。
「当たり前だろう、何を遠慮しているんだ?」
 別にシェリスは遠慮している訳ではない。だがしかし、この妙にほのぼのとした空間に劉鳳が居ること自体に違和感を感じて仕方ないのだ。
(これなら追い返してくれた方がまだましよぉ)
 シェリスは自分が此処に居るのが居たたまれない。
「はい、シェリスさん、どうぞ…」
 かなみは遠慮しがちにシェリスの前にお茶を置く。
「ありがとう、かなみちゃん…よね?」
 にっこり笑ってシェリスが言うと、かなみはぱっと笑う。
(可愛いなぁ)
 こういう小さい女の子を見ていると和むのも解かる気がする。そう、それならそれで珍しい劉鳳を見るのもいいかも知れない、とシェリスは腹をくくる。
 見ていればこの二人がすごく仲がいいことが解かる。他の集落の人達には敬語を使っているかなみも、劉鳳には違う。劉鳳も普段はあまり見せない笑顔をかなみには惜しみなく見せている。
「あの…シェリスさんと劉くんは…恋人同士…って訳じゃないんですか?」
「そんな筈ないだろう、かなみ」
 かなみの質問に劉鳳は即座に否定する。
(そんなはっきりしっかり否定しなくてもいいじゃない〜〜〜〜っ!)
 シェリスのそんな心の叫びが聞こえる筈もなく、劉鳳は平然と言い放つ。
「シェリスはただの同僚だ」
「そう…なんですか?」
 少し疑わしげにかなみはシェリスを上目遣いで見る。
(あれ、このコ…)
 そうか、このコも劉鳳のことが好きなんだ。そう思い至るとますます可愛いなぁと思ってしまう。
 こういう小さな女の子相手だと、シェリスも警戒心などまるで出さずににっこり笑う。
「ええ、そうよ」
 そう言うとかなみはぱぁっと笑顔になる。
 まだ八歳だということだし、これぐらいはいいだろう。別に警戒することもないし…。
 そう思って劉鳳を見るといかにも優しげな瞳でかなみを見ている。
(……)
 これをどういう風にとれば良いのか解からず一瞬シェリスの思考が停止する。
(そう、そうよ!きっと妹みたいに可愛がってるんだから当然よね!)
 そういうことにしてシェリスは人心地つく。妙に気疲れしてしまって、一口お茶を飲んだ。
「おいしい」
 かなみの入れるお茶は、分量も蒸らす時間も完璧だ。本当に八歳だとは思えないぐらいだ。
「ありがとうございます」
 かなみは照れたように笑う。
「ねぇ、今度あたしにも入れ方教えてくれる?」
「はいっ」
 かなみは満面の笑みで笑う。
(可愛い〜vvこんな妹欲しいなぁ〜〜♪)
 最早警戒心は何処へやら。シェリスはかなみが猛烈に気に入ってしまった。やはり幼い子供の持つほのぼのとした雰囲気は人の心を和ませる。
 それからかなみは劉鳳を見ておずおずと言う。
「あの、劉くん。お茶おいしい?」
「ああ、かなみの入れてくれるお茶はいつも美味いな。毎日飲んでいても飽きない」
「本当?これからもずぅっと毎日入れてあげるねっ」
「ああ」
 二人はにっこり笑いあう。
 そこで固まったのはシェリスだ。
(ずぅっと、毎日!?)
 それはどういう意味でだろう。
 もちろん、考えすぎだとは思うのだが、それでもやはり聞かずにはいられないのが恋する乙女というものだろう。
「あの…一つ聞いていい?」
 おずおずと尋ねてくるシェリスを二人は不思議そうに見る。
「何だ?」
「あの…かなみちゃん、は劉鳳のこと好き…なのよね?」
 そう質問するとかなみの顔は真っ赤になる。
「…はい」
 真っ赤になりながら頷くかなみは可愛いとは思う。思うのだが、やはり此処はライバル。きちんと劉鳳に白黒はっきりつけてもらわなければいけない。
「で、劉鳳はどう思ってるの!?」
「…もちろん俺もかなみのことは好きだぞ?」
 なんとはなしに言う劉鳳にそれが恋愛対象の好きだということが解かっているのかどうか疑問に思ってしまう。
「それは、恋愛対象としての好き…?」
「もちろんだ」
 そこでシェリスはがくっと机に突っ伏す。
(まさかっ、まさか劉鳳がロリコンだったなんて…っ!!)
 どうりでどんな女性に好意を示されても落ちない筈だ。そうして二人はラブラブライフを送っているらしい…。
 となればシェリスの行動は一つ。
「あ、あたし、もう帰るわ!」
「そうか?」
「うんっ、じゃぁ劉鳳、またねっ」
 シェリスは元気よく笑って言うがその笑いは引きつっている。
 しかしその辺ににぶい劉鳳もかなみも気づいてはいない。
「それじゃぁ、かなみ。俺達もそろそろ寝るか?」
「うんっ」
 にぃっこり笑ってかなみは頷くが、シェリスにはまた一つ疑問が出来る。
 この部屋に置いてあるベッドは一つ。そして、枕は二つ、シーツは一つ。
「もう一つ聞いていい?」
「なんですか?」
「…此処で、二人で寝てるの?」
「はい。それが何か?」
「…ううん、なんでもない…」
 そう言ってシェリスはふらふらとその部屋を後にした。そしてシェリスは心の中で誓ったのだ。
(もう二度と、あの部屋には行ったりしないっ!!)
 なんと言っても劉鳳のこと、途方も無い間違いはないだろうが、それでも一つのベッドで二人が寝ていることへのショックはでかい。
 シェリスが明日食欲があるかどうかは、この二人にかかっている。
 がんばれ、シェリス、まけるなシェリス!!
 明日はまだまだ遠いぞ!!



Fin





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