忙しい一日も終わり、ほっと息をつくとき。 二人は一緒にお茶をして、一日あったことを和やかに話すのだ。 それは、とっても幸せな時。 ほっとする時だったのです…。 「はい、劉くん。お茶をどうぞ」 かなみがにっこりと笑って劉鳳の前に湯飲みを置く。 「ありがとう、かなみ」 劉鳳も微笑んで礼を言う。 小さな小屋で、劉鳳とかなみは同じ部屋で寝泊りしている。 集団での生活なので、皆結構大雑把に割り振られた部屋割りだが、かなみは人見知りが激しい方で、劉鳳にくっついて離れなかったので自然とこうなった。 けれど、それも見ていれば微笑ましいもので、誰も文句を言うものなど居なかったが。 かなみは不思議と劉鳳に懐いていた。 劉鳳もかなみには心を開いていたし、それが一番いいと皆が思っている。何よりこの二人が仲良くしているのを見れば、この殺伐とした不安定な環境の中で誰もが心を癒された。 二人がこの集落の未来への希望だったのだ。 しかし、そんなことにも本人たちはお構いなし。ただ二人仲良く一緒に笑って話しているだけ。まぁ、それがいいのだろうが。 かなみは、自分の分の湯飲みをもって、劉鳳の向かい側に座る。 こんな風にゆっくり出来る時間は二人とも好きなので、何時の間にか習慣になっていた。 「あ、そうだ。今日田中のおばさんがね、わたし達のこと、夫婦みたいだねって言ってたんだよ?」 「…夫婦?」 かなみの突然の言葉に劉鳳は固まる。 「…かなみはまだ八歳だろう?」 「うん。だけど、そんな風に見えるんだって」 「かなみは見た目よりしっかりしてるからな」 劉鳳は嘆息しつつ、かなみを見つめながら言う。 確かに、見た目はどう見ても八歳なのだが、性格がしっかりしているので大人びている。 知識も他の子供たちより秀でているようだった。 「そうかな?」 「ああ」 劉鳳は微笑む。 「劉くんは、わたしと夫婦みたいって言われるの、イヤ?」 「え?別にそんなことはないが…」 「わたしはね、嬉しいよ」 かなみはにっこり笑って言う。さらりと凄いことを。本気なのか本気でないのかと言ったら、この子はいつも本気だ。 「嬉しいって…」 「わたし、劉くんとだったら結婚しても良いな。まだ出来る年じゃないけど…劉くんはいや?」 「嫌なわけないだろう?俺だってかなみと結婚できるのは嬉しい」 今度は劉鳳が真面目な顔をして言う。 此処に誰かがいたらな速攻突込みを入れてくれただろうが、あいにく、此処には二人しか居ない。この二人が話せばそれは全部本気なのだ。 だからこそ末恐ろしいものがあるのだが、二人はそれに気づきはしない。 「じゃぁ、わたしが十六歳になったら結婚しようね」 「…その時俺は二十五歳か?」 「大丈夫だよ、劉くん、綺麗だし、かっこ良いし。二十五歳になった劉くんも、わたしは好きだと思うよ」 「そうか?」 「そうだよ」 そうして二人で勝手に納得して、いつの間にやら結婚の約束までしていた。 二人は果たして八年後、結婚するのかしないのか…。 「かなみ、もう寝ようか」 「うん」 ちなみに、この部屋にベッドは一つだけである。 枕は二つ。シーツは一つ。二人とも寝相はいいので問題ないらしい。 それにしても、これに違和感を感じる人間は、未だにこの集落にはいないらしい…。いつ、現れるのだろうか? Fin |