Happy Birth Day  来栖×瀬那 18禁ver


ひろみ様


「だーから、放っといてくれっつってンだろ?」

俺はそう言って、水落センセ…瀬那にレポート用紙を突っ返した。
瀬那は困ったような顔をして、「逢坂くん…」と力無げに呟く。
俺はそんな瀬那を見て苛立ちを隠せないでいた。
恋人同志の俺達に、遠慮は不要。
しかも、ここは学園で、立場的に偉いのは明らかに先生である瀬那だ。
レポートを提出しねえ学生なんざ、とっとと怒鳴ってやらせるか、放っておくかすりゃあいいのに、やつはそれをしない。

それは…俺が、ウィンフィールドの王子だからか?

「…東堂先生もご心配でしょうから…」

そして、二言目にはオッサンの名前を出す。

「おっさんは関係ねーだろ」
俺はわざと、低い声で不機嫌さを表に出す。横目で瀬那を見たら、マジで困った顔をしてた。

…バッカじゃねーの?

今日が何の日か、わかってんのかよ?

…お前の…誕生日…だろ?

自分の誕生日にまで、俺の進級の心配してんじゃねーっての。

「ほら、よこせよ」
「え?」

俺は、さっき突っ返したレポート用紙をひったくる。

「しゃーねーから、やってやるよ。今日は特別………お前の誕生日だから」
瀬那は、まるで今言われて初めて気づいたように驚いた。
…おいおい、忘れてたとか?

「レポートが誕生日プレゼント…なのですか?」
「なに?いらねーって?」
俺はからかうようにニヤリと笑うと、背伸びをして瀬那の顔に近づく。
「いえ。…いただきます」

瀬那の唇が重なる。俺からしたのか、それとも瀬那から触れたのが速かったのか。


白紙のレポート用紙を横目に、口付けたまま、もともと少しだけ緩んでいる瀬那のネクタイをはずす。
俺の手の動きに気づいた瀬那が、無意識に身体を強張らせる。

生物室だからか?
唇を離してやると、瀬那はごく小さな息を吐いた。
頬は、俺の気のせいではなく、ほんのり赤く染まっている。
それでも、レポートのことを忘れてはいなかったらしく、「先生」の顔に戻ろうとする。

「私の誕生日プレゼントに、レポートを下さるのでしょう?」
つまり、学校ではこーゆーことをすんなっつーことか。
それなら俺にだって、考えがあるぜ?

「だから、書くっつってんだろ?」
「私の誕生日に下さるのでしたら、もう書き始めないと、時間がありません。今日中にお願いします」

さっさと生物室を出て、レポートを書け、って事だろう。
期待してるくせに、教師の仮面をつけたまま、そんな事言う口をまた塞ぐ。

「動物の行動についてのレポートだっけか?」
強引なキスのあとに平然とレポートの話をしてみせると、瀬那が物足りなさそうな瞳を必死で隠して続ける。
「…はい。図書室に行くと資料もありますし、教科書や参考書にも興味深いものが載っています。
特に実験などしなくても、単純にまとめるだけでも立派な物が出来ますし」
俺はふうん、と聞き流しながら、瀬那のベルトを緩めた。

「じゃあさ、俺の題材はあんたにする」
首筋に息を吹きかけながら、囁くと、瀬那は驚いて後ずさった。
「動物の行動…だろ?人間だって動物なんだからいいじゃん」
「それは…」
我ながら、ガキみてーな発想だとは思うが、もちろん本気じゃない。
…これからすることは、本気だけど。
「水落センセの行動レポート」
「生物のレポートにはなりませんね」
瀬那は俺の冗談を見透かして笑う。
「『水落センセは、恋人から触られると…感じる』……今からレポート用紙に書こうか?」
冗談だってわかっているのに、期待してるから、赤くなるんだろ?
ほんとに、可愛いよ…あんたは。

「逢坂くん」
遠くの廊下を通る生徒の声が近くなってきて、瀬那が少し焦ったように俺の名を呼んだ。
「なに?」
気づいていて、わざとらしく、瀬那を見つめる。
瀬那の顔は「水落先生」のそれではなく、恋人の「瀬那」の顔になりつつあった。

「人が…生徒が…来ます…から」
いつも冷静な瀬那が、めずらしく焦っているところが可愛くて、俺はわかっていながらゆっくりとその顔を楽しむ。

「それで?」
「…ですから、その…」
まじまじと自分を見つめる、俺の視線に耐えられなくなったのか、俺を見ないようにしながら言う。
そうしてる間にも、生徒が生物室の前を通り過ぎようとしている。
生徒が見えるか見えないか、の瀬戸際で、ようやく俺はドアのカーテンを閉めた。


「こーしたら、いいだろ?」
もしかしたら、生徒が不審に思って、ドアの前をうろうろするかもしれない。
けど、もしそうなっても、俺は構わない。
瀬那が喘いで声を出せば、水落先生が誰かと付き合っている…という噂がたつ。
そして俺が瀬那と生物室から出てくれば、その相手は俺。
あの優しい水落先生が、生物室でいやらしい声をあげる。
それをさせているのが、俺だという優越感が、沸々と俺の中で沸きあがってくる。
あんたを狙ってる生徒はたくさんいるだろうからさ。

実験をする時のための黒いカーテンを、そのためじゃなく引くと、生物室が暗くなる。
僅かに入る日光に照らされた瀬那の白衣が、いやに艶かしい。
ゆっくりと、ビーカーやら試験管やらが入っているガラス棚に瀬那をおいやり、口づける。
さっき味わったばかりだけど、先刻よりも甘い感じがするのは、俺の気のせいなのかもしれない。
口の中を味わうように、舌を舐めて絡めとる。
貪るようなキスは、瀬那を感じさせるにはじゅうぶんだった。
長い時間、唇を塞いでいたから、離したときには瀬那の息が上がっていた。

「感じてんの?水落センセ」
返事の変わりに顔を赤くした瀬那のシャツのボタンを、ひとつずつ、見せ付けるようにはずしていく。
少しずつ露になる肌は、じんわりと熱くなっていた。
つつ、と肌を指でなぞると、瀬那は小さく声を漏らした。
「…っ」
もっと声が聞きたいから、胸の先端を焦らすようになぞる。
「…ぁ…」
強く摘むと、瀬那の身体がほんの少しだけ跳ねた。

「……『水落センセは、乳首を触られるのが好き』……これも書いた方がいい?」
あまりにも可愛いから、既に忘れてるだろうレポートの事を引っ張り出した。

「……レポートは、違う題材にしてください」
さっきみたいに流すのではなく、半ば懇願するような声色だった。
冗談として流さなかった……じゃなく、流せなかった…のだろう。
……感じすぎて。

そんな瀬那が可愛くて、俺はしつこく胸ばかりを撫で回す。
時には舐めて、甘く噛む。
そのたび、瀬那の身体は喜びに跳ね上がり、そうすると「やめてください…」と気弱な声が響く。
「やめてください」と言う瀬那の声は、俺の脳内で「もっとしてください」に変換される。
誘ってるとしか思えない、震える声は、俺に反応するたびに高くなる。

「瀬那…」
「ん…ぁ……クリストファーさま…」
学校では絶対呼ばないその名を、口にするほど瀬那は切羽詰っていた。
「さま?」
恋人にさま、はねーだろ…?の意味もこめて、ズボンと下着を一気に引きおろす。
声にならない声を漏らした瀬那自身は、すでに俺を求めて育っていた。
「やらしいな?水落センセ」
瀬那がクリストファーさま、って言ったから、俺も水落センセ、で返す。
その「水落センセ」は、生物室で、はだけたシャツと取れたネクタイに白衣、下は野郎とは思えない位美しい足だけ。
中心からは先走った精が流れ、勝手に俺を手伝おうと瀬那の秘部にながれていく。
俺は瀬那の脚をひらいたまま、舐めるように全身を眺めた。
生物室で、脚を開くあんたは、最高に美しいから。

「……クリス…」
小さく呟いた瀬那の瞳の蒼が、揺れた窓際のカーテンから差し込む日差しに照らされて光る。
少しだけ汗ばんだ額に、赤い前髪がはりついて色っぽい。
「…何」
言わなくてもわかる。瀬那の前は、もうはちきれるほどに張り詰めて、俺の愛撫を待っているから。
けど、俺は瀬那の口から聞きたい。
いつもなら、言わなくてもするところだが……

今日は、特別だろ?
「言えよ…」
至近距離で囁いたから、瀬那のものに息がかかってそれだけでも苦しそうに震える。
こういう時じゃなくても、いつだって瀬那は自分の欲求は後回しだった。
何もかも、王子様のワガママが先。
そういう性格なんだって知ってるし、ウィンフィールド育ちだから、近衛兵だから、俺が王子だから…。
あんたのそーゆうとこは、嫌いじゃねーけど、やっぱり俺としては対等でいたい。

恋人同士だから。

「…誕生日だろ?何が欲しい」
いつもは言えないかもしれない。
けど、今日は特別。
「誕生日」って言い訳があったら、あんたは俺に、何か頼めるだろう?
しゃーねーから、俺から「誕生日」の切り札を使うから………だから、言えよ。
「瀬那」
促して、ようやく、形のいい薄い唇が動いた。

「……あなたが…欲しい…です」
「瀬那……!」
恋人同士になったばかりで、欲を言わない瀬那。
ほぼ初めて聞いた欲求は、震えるほどの良い声で、聞いた瞬間、俺の中で血が波打った。
次の瞬間にはもう、瀬那の身体を抱きしめ揺さぶり、突き上げていて…。
愛しさが溢れ出す。
俺が瀬那の中で動くたびに出てしまう声や濡れた白衣が、俺を追い詰める。
可愛くて愛しくて、仕方無い。
綺麗な髪も、しなやかな身体も、すべて俺の物。
瀬那が達った瞬間に締まった中で、俺も瀬那の中に放っていた。



生物室を出て、一緒に寮に帰る。
そのまま寮監室に入ろうとしたら、瀬那のやつ、ドアを閉めようとしやがった。

「ああん?」
「レポート…楽しみにしています」

ホントのプレゼントが恋人との時間だってことに、気づいているくせに……意地悪なあんたは、気づかないふりで微笑む。
…生物室で襲った仕返しか?
もうあと数時間で、4日ですよ…と微笑んだ瀬那は、俺の手にレポート用紙を持たせてくる。
身から出た錆…。

でもま、瀬那の笑顔が清清しいから…。
こんなんもたまにはいいか、と思ってしまう自分に苦笑しながら、俺は数年ぶりに参考書を開いた。



 ひろみさんのサイトで瀬那のお誕生日のお祝いでフリーになっていたイラストとSSを頂いてきました。
 素敵な来栖×瀬那です。
 瀬那と来栖の掛け合いが大好きです。そして色気溢れる二人。
 さり気に一番セクシュアルなカップルな気がします。
 快く掲載許可を下さり、有難う御座いました。



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