その日、SOS団恒例の市内探索の組み合わせは、あたしと古泉くん、それからキョンとみくるちゃん、有希の三人の組み合わせになった。 正直、みくるちゃんと有希の二人に挟まれたキョンがデレっとしている感じが気に入らなかったけれど、籤運だから仕方ない。 古泉くんと一緒っていうのは、嫌じゃないし。 「何処に行きますか?」 あたし達とは別方向に向かうキョン達を見送ってから、古泉くんがあたしに聞いて来る。 「うーん、何処に行こうかしら。不思議なんていうのは、案外その辺を歩いたらひょっこり出てくるものなのよ!兎に角歩きましょう!」 「はい、解かりました」 あたしの言葉に、古泉くんは笑顔で頷く。キョンみたいにいちいち文句言ったりもしないし、みくるちゃんはあたしが引っ張っていくとすぐ涙目になっちゃうし、有希だったら無言でついてくるだけだから、古泉くんみたいにあたしの言葉に賛成してくれる人が居るのは、凄く嬉しい。 それに、古泉くんといると、不思議と落ち着く。 あたしが先導して歩き始めて、古泉くんはそのすぐ斜め後ろを着いて来る。あたしがどんな所に走って行っても、すぐに追いかけられるように。 あたしがどんな所に行っても、古泉くんは着いて来てくれる、それだけは、絶対に信じられる事だった。そんな古泉くんを、キョンは自分の意思が無いみたいに言う事があるけど、そんなことない。古泉くんは、ちゃんと自分の意思で動いてる。あたしはそれを知っている。 本当に嫌だったらちゃんと嫌だって言うし、駄目だと思ったら駄目だって言う。 ただ、キョンはそれを知らないだけ。 「涼宮さん、駄目ですよ」 言われて、そっと腕を引かれる。 「赤信号です」 言われて前を見てみれば、確かに信号が赤のところを渡ろうとしていた。考え事をしていて、前がちゃんと見えてなかったみたい。 「有難う、古泉くん」 「いいえ」 お礼を言うと、古泉くんは優しく笑う。 その笑顔を見るとほっとする。 こうしてさり気無くあたしを守ってくれるのも古泉くん。絶対主張しないし、本当にさり気無いけれど、あたしはそれが嬉しい。 いつも優しい目をしてあたしを見て、大切にしてくれてるんだって凄くよく解かる。 きっと、他の誰に解からなくても、あたしと古泉くんは解かっている事。 信号が青になるのを待って、あたし達は先に進んだ。あたしは古泉くんの手を掴んで引っ張る。古泉くんは少し驚いたような顔をして、それからまた優しい目であたしを見る。 「何か目的地でも見つかりましたか?」 「あっちから何か良い匂いがするのよね。美味しい物が見つかりそう!」 完全に本当の目的とは違う事を言うあたしに、古泉くんは笑う。呆れたりはしない。 「じゃあ、それが見つかったら僕が奢りましょう。他の皆さんには内緒で」 「さっすが古泉くん。率先してそう言ってくれるのなんて古泉くんだけよ!」 「恐縮です」 古泉くんは笑う。あたしも笑う。 こんな時間がとても好きで、だから、キョンが他の女の子と一緒なのだって、気にしない。もしあたしがそれを気にしたら、古泉くんはあたしに忘れさせるために色んなことをしてくれる。退屈させないように、楽しめるように。 そんな古泉くんはやっぱり、あたしの大事な、SOS団の副団長だと思う。 他に、代わりなんて居ないんだから。 Fin |