翔が仕事を終えて家に帰ると、瀬那が出迎えてくれた。 「ただいま」 「お帰りなさい。ご飯出来てますよ。それとも先にお風呂に入りますか?」 「ここで、『それとも私?』とか言うと新婚っぽいよなぁ」 思わず呟いた翔の言葉に、瀬那が呆れたような顔をする。 「…翔、最近クリストファー様に似てきましたか?」 「何で逢坂先輩なんだよ」 「あの方なら如何にも言いそうだと思いまして」 「そりゃそうだけど」 翔は苦笑いを浮かべる。 「でもさ、やっぱオレ、ご飯や風呂よりセナの方がいいな」 そう言って翔は瀬那を抱き寄せる。 瀬那は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑を浮かべた。 「それは後でもいいでしょう?食事が冷めてしまいますよ」 「今がいい」 「んっ…」 キスをされて、瀬那は頬を赤らめる。それを見て翔は笑って瀬那を抱きしめた。 「翔、そういえば…」 「なに?」 「…また、背が伸びました?」 「…そう?」 「ひょっとしたら、もう私より高いかも…」 そう瀬那が言うと、翔ははっとしたようにリビングの方に走っていった。瀬那は苦笑いを浮かべながらその後についていく。 二人の暮らしている家には何故か身長測定器が置いてある。というか、翔がどこからか持ち込んだものなのだけれど。 「ねえ、瀬那。いくつになってる?」 「はい。えー…、百八十四センチ、ですね」 測定のメモリを見ながら瀬那が言うと、翔は嬉しそうにガッツポーズをした。 「やった!これでセナの身長越えたな!」 「そうですね」 「いやぁ、毎日牛乳飲みまくった甲斐があったよなぁ…」 感慨深げに言う翔に瀬那は苦笑する。 「それにしても、どうしてそんなに私の身長を越えたかったんですか?目標を達成したら教えてくれる約束でしたよね」 「だってさー、やっぱ男としては好きな人より身長低いとカッコつかないじゃん」 「それは、私が男だと解かった上で言ってるんですか?」 翔の言葉に瀬那は何とも言えない微妙な表情をする。それを聞いて翔は慌てて首を振る。 「え、いや、そうじゃなくてさっ。初めて会ったときからセナは大人で、十以上も年上で、経験も豊富で…身長だって十五センチ以上差があっただろ」 翔は真剣な眼差しで真っ直ぐ瀬那を見つめた。今はもう、視線の位置も殆ど同じだ。 「オレは、もっとセナに甘えてもらいたい。頼ってもらえるようになりたい。でも、オレはやっぱガキだったし、今だってそれはあんまり変わんないと思う。でも、それで諦めるのは嫌だからさ、年や経験なんかはどうやっても追いつかないし、だから、せめて身長ぐらいは追い越したいと思ったんだ。少しでも、セナを支えられるように」 「翔…」 翔がそんな風に考えていたとは思わなかった瀬那は目を見開いた。そんな瀬那に翔は笑いかけて、しっかりと抱きしめた。 「十五センチも低いまんまじゃ、セナを抱きしめるのも満足に出来ない。倒れそうな時だって上手く支えてやれないだろ。ずっと、こうやってちゃんとセナを抱きしめたかったんだ」 そうやって、翔はなおさら強く瀬那を抱きしめる腕に力を込めた。それに答えるように、瀬那も翔の背に腕を回した。 「翔…でも、私は身長なんて越えなくても、もうずっと前から、十分あなたに甘えているんですよ?」 瀬那は翔の肩に額を当てて言う。顔は見えないけれど、どんな顔をしているのかは、何となく解かる。それに笑みを浮かべて、翔は瀬那の耳元で囁いた。 「だったら、今まで以上に、もっとオレに甘えてよ」 そう言って、翔は瀬那にキスをする。それに答えるように、瀬那も目を閉じた。 ベッドに座った翔は後ろから瀬那を抱き寄せて膝の上に座らせた。まるで子供のように膝に乗せられて、瀬那は戸惑い、翔を振り返る。 そんな瀬那に翔は笑みだけ浮かべて瀬那のズボンの前を寛げ、手を滑りこませた。 「あ…っ」 反射的に漏れた声に気を良くして、翔はそれを握りこんだ。最初は緩く、あやすようにして刺激していく。だんだんと立ち上がってくると、それに合わせる様に瀬那の快感を助長していく。 「んっ…は…ぁ!」 「何か、いつもより感じやすいみたいだね?」 「翔っ」 「もう、こんなになってる」 すっかり立ち上がったそれを少し強めに掴んだ。 「ぁあっ!」 瀬那から漏れる甘い声に煽られるように亀頭を撫で上げ、瀬那の感じる場所を愛撫していく。もう片方の手は逃げられないようにしっかり腰に回している。 先走りが溢れ出し、其処はぴくぴくと震えて限界を訴えている。 「翔、翔…もう…ああ……っ」 「いいよ、一回先にイって」 そう言って手の動きを促すものに変え、何度も強く扱きあげる。 「んっ、あ…ぁああっ!」 瀬那は甘い喘ぎ声を発して翔の手の中で放った。 すっかり乱れた息を整える瀬那を見ているだけで下半身が疼く。翔の膝の上に乗せられている瀬那は翔のそれが立ち上がってきているのを感じ取って、体を震わせた。 翔は、瀬那の精液で濡れた手で入り口に触れた。それだけで、瀬那の体はびくっと震える。 指を中へ入れると、熱い内壁が収縮し、絡まってくる。少しずつ解していきながらも、気が急いてくるのは止められなかった。 そして、そうしていくうちに、瀬那の息もまた、だんだんと上がってくる。 「翔…翔…っふ…」 瀬那の掠れた吐息が翔を誘う。 三本まで入れた指をゆっくりと引き抜いて、瀬那の中に押し入った。 「ぁあ…っ!」 全てを収めると、二人ともゆっくりと息を整える。瀬那の中はいつでもよすぎるぐらいで、本当はすぐにでも動き出したいけれど、あまり無理をさせたくない。 瀬那が慣れたころに、少しずつ腰を動かし始める。 「セナの身長越えたら、この体位をするのが夢だったんだよな」 「別に、そんなのいつでもいいじゃないですか」 翔の言葉に、瀬那がそう言う。まあ、瀬那がそんな風に言うことぐらいは想像がついていたけれど。 「だって、オレの方が背が低いんじゃ、カッコつかないだろ、これ」 「格好なんて、つけなくても…っぁ!」 瀬那の言いたいことは大体解かるから、それを全部言わせる前に思い切り突き上げた。 「セナが好きだから、だから、好きな人の前なら、カッコつけたいって思うんだよ」 そう言ってさらに突き上げた。瀬那は続けざまに甘い吐息を零して、腰を支える翔の手をしっかりとつかんで来る。瀬那がちゃんと感じている証拠だ。 「ゃっ…は…ぁあ…あ…ん…」 「すごく、色っぽいよ、セナ…」 「翔…あ…っんん!」 瀬那の前を握りこむと、喉が鳴った。大きく張り詰めていて、限界が近いのが解かる。 いつもより瀬那も翔も上り詰めるのが早い。やはり、何となくいつもと違う気分になっている所為だろう。この体位も影響しているのかも知れない。 いつでもしていいと言いながら、結構恥ずかしそうだったから。 取り留めのないことを考えながら、翔は欲望の赴くままに深く瀬那を突き上げる。自分の限界に達したと思ったところで、一番奥まで突き上げ、瀬那の前を扱いた。 「ゃ、あっ…ぁあああっ!!!」 「くっ」 瀬那が達すると同時に、翔も瀬那の中に放つ。 ぐったりと翔に体を預けてくる瀬那をしっかりと抱きしめて、幸せに浸った。 ベッドの上ですっかり脱力している瀬那を見ながら、翔が言った。 「瀬那、ご飯、できてるんだよね?食べよう」 「先に食べててください」 「…冷めるよ?」 くすっと笑って言うと、軽くにらみつけられた。まぁ、セックスの直後に食事なんて無理だろうが。ようするに、内臓を思い切りかき回される行為なのだから。 ちょっと拗ねた様な表情の瀬那が可愛くて、一緒にベッドに寝転びながらしっかりと抱きしめる。 「翔、ご飯はいいんですか?」 「いいよ。セナが食べられるようになったら、温めなおして、一緒に食べよう」 「翔…」 「それから、一緒にお風呂に入って、一緒に寝よう?」 「…はい」 瀬那の顔を覗き込むようにして言うと、瀬那は微笑んで頷いた。 とりあえず、瀬那が食事が出来るようになるまでは、こうして一緒に寝ていよう。 この腕の中で抱きしめて。 Fin |